ここでは風水における典型的な吉祥の建物配置である四神相応と建物周辺環境の超基本的な見方を紹介します。物件を選ぶときにまず目に入る部分で、以前にお伝えした「風水が扱う目に見える、形を持ったもの=巒頭(らんとう)」のお話です。
なお、風水そのものにかかる私の考えの概要については、よければ以前にまとめた「風水について」をご参照ください。
四神相応の建物(例:国会議事堂)
四神相応(しじんそうおう)とは、後ろと左右の周囲三方が適切に守られ、前方が開けた土地にある建物のことを言い、風水の典型的な吉祥の周辺環境です。
どんな物件を取り上げるか迷ったのですが、ここでは国会議事堂を取り上げます。
国会議事堂と言えばテレビ中継などでこの方向からの映像がよく使用されますが、正門、正面玄関があるこの東方位がまさに建物の顔となる面に当たります。
そのうえで建物の周辺環境を見ていくと、建物の左側には参議院分館(と、その奥には国会図書館)、右側には衆議院分館(と、その奥には内閣府庁舎)が存在しています。
建物の背後には林があって道路を挟んではいますが衆議院、参議院の議員会館が背後に存在しており、さらにその奥には江戸時代には江戸城の鎮守として徳川家の崇敬を受け、明治5年には東京府の府社とされ崇敬されてきた日枝神社が存在しています。(参考:日枝神社HP)
そして建物の正面側には正門を望むオープンスペースがあり、こうしたものが四神相応に相当します。風水における吉祥の建物配置の中で最も有名なものです。
ここまで規模の大きなものでなくても、あなたの住む町の建物や知人友人の居宅などにも三方を建物に囲まれて前方に開けた公園などがある建物を見つけることはそこまで困難ではないのではないでしょうか。
※建物の正面をどう判断するかは建築物によってはプロでも判断が分かれる話ですのでここでは詳細は割愛しますが、玄関(メインエントランス)の方位、掃き出し窓などの開口部が大きい方位、オープンスペースの方位や建築のデザインなどから正面を判断します。玄関がある面、あるいは大きな掃き出し窓がある面がそのまま正面になるわけではないのでご注意くださいね。
建物の背後
さて、ここからは建物の四方がどのような象徴を持つのかについて話を進めます。
建物の背後は風水において玄武方位と呼ばれ、貴人を示します。建物の住人や使用者の背後を守ってくれる上司、先輩、年長者というイメージでしょうか。
つまり、建物の背後を守る山林や建物がある場合には上司や先輩らからのフォローがあると判断し、建物の背後がたとえば大きな道路で断絶されている場合、風水では上司や先輩らからのフォローの断絶を意味するということです。
※例として挙げた国会議事堂については、建物背後に道路は走っておりますが、建物の規模と道路の規模を勘案して鑑定します。例えば高速道路や線路、一級河川により背後が断絶されているものと一般道、あるいは歩道のみで断絶となっているものは影響力の大きさが違うということです。
ちなみに過度に大きな建物等が玄武方位に存在する場合には「上司等からのプレッシャーに押し潰される」と判断するもので、適切な高さも存在します。
建物の左側
建物の左側(南向きの建物の場合、東側のことです)は青龍方位と呼ばれ、建物に居住などをしている人の内、男性を示します。
そのため青龍方位に山林や適切な高さの建築物などがある場合には宅内の男性に対するフォローがあると見ますし、たとえば青龍方位が吹きっ晒しの空き地である場合には、宅内の男性に不利な建物であるとみることができます。
建物の右側
それに対して建物の右側(南向き建物の場合、西側のことです)は白虎方位と呼ばれ、宅内の女性を示します。
そのため白虎方位に適切な高さの建築物などがある場合には宅内の女性に対するフォローがあると見ますし、たとえば白虎方位に線路が通っているなどして白虎方位が断絶されている場合には宅内の女性に不利な建物であるとみることができます。
青龍、白虎方位の建物同士の高さにも関連があり、白虎方位に巨大な建物があり青龍方位には低い建物のみ存在する場合なども宅内の男性に良くないという判断になります。三方すべてにおいて適度な高さとバランスの善し悪しがあるということです。
建物の正面
建物の正面は朱雀方位と呼ばれ、建物居住者らの収入運に関係のある方位となります。
建物の正面は開けているほど良いとされ、朱雀方位のオープンスペースを「明堂(めいどう)」と呼びます。明堂は大きなオープンスペースがあり、かつ視線を留める対象物があるのが良い、建物や木々などの遮蔽物で閉ざされることは良くないとされます。
野営地等における適切な場所と四神相応の関係
風水は中国などで古代から存在する住環境に対する吉地を研究する理論体系だと以前言いました。ここで少し古い時代の居住環境に対する考え方がどのようなものであったかを考えてみます。
古代における住居は簡素なもので、自宅周辺の建物には強盗などといった人的な被害もさることながら肉食の野生動物による被害も現代とは比較できないくらい多いものであったと思われます。
そうした中でまず住居の立地を選ぶ際に重要視されたのは「その土地が安全な場所かどうか」であったことは想像に難くありません。
例えば野営等を考えるとわかりやすいのですが、吹きっさらしの中で野生動物や強盗の存在におびえながら一晩を過ごすよりも、三方が岩山に囲われて前方が開けて川が流れている場所の方が安全を確保できそうな土地であることはなんとなくイメージしやすいのではないでしょうか。
強風の影響を受けにくく外敵の侵入を凌ぎやすいこと、そして前方の様子を視認しやすい見晴らしの良い土地。それが四神相応というものに至る原初の思想だったのではないかと私は想像をしています。
あるいは風水の周辺環境の観法は「建物の代わりに自分一人がその位置に立ち続けていたなら快適な場所か否か」という見方でも多くのことが見れるのではないかなあなんてことも考えていたりします。背中を預けることができる大きな存在が背後におり、左右を友人が囲んでいて前方の視界が開けているというような状況に近いのではないかと。
現代都市に四神相応の物件がどれだけあるのか?
と、ここまで書いてきたようなことが四神相応と風水における超基本的な建物周辺環境の観法ですが、実際問題として現代日本の都市部で四神相応の建物は数が多いわけではありません。
とはいえ四神相応以外にも周辺環境を見るポイントは無数に存在しますし、四神相応ながら他の環境が致命的に悪い物件も、四神が整っていなくても良い物件も無数に存在します。
そして実際の鑑定では目に見える周辺環境のみでなく、目に見えない気の流れである理気の善し悪しもまた重視するものですから、たとえ周辺環境が四神相応の物件であったとしても凶悪な運気の流れを持つ居宅には住むべきではないと考えています。
ですので四神相応は周辺環境のみを考慮した場合の基本的な吉祥例の一つであることと、風水理論が建物四方の周辺環境をどのように捉えているかという参考にだけしていただければ幸いです。
何より肝要なのは「悪すぎる周辺環境の物件を避けること」です。風水には「凶を避けることで吉に赴く」という思想があるのですが、まずは凶を知って避けることが運気を上げる第一歩になると考えています。
次回からは風水の周辺環境において代表的な凶とされるものを紹介していこうと考えています。ここまで読んでいただきありがとうございました。
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