フライングスター風水(玄空飛星派風水)とは、建物内部を流れる目に見えない理気を量るために特化した技法で、中国の唐時代、日本で言う奈良時代からおよそ千年近くにわたって秘匿され続けてきた歴史を持つといわれる「最強の風水」と名高い風水技法です。
中国文化圏のみでなく欧米諸国においてもどんどん広まっており現在風水業界において最も信頼されていると言って差し支えないこのフライングスター風水(玄空飛星派風水)の特徴は「各方位の吉凶はその建物ごとに異なるものであり、その吉凶方位も時間の経過とともに移り変わる」とするところにあります。
ここではこの技法ががどのように建物内部の理気を判断するのかについて、その概要をここでは書いていきたいと思います。
なお、「フライングスター風水の基礎知識」の記事に少しだけ流派のことを書きましたが、この記事で紹介する玄空飛星派風水の理論は「沈氏玄空学」の流派によるもので、この沈氏玄空学の技法が世界に最も広まっている技法そのものです。
また、風水はその建物を取り囲む山や川、あるいは別の建物や道路といった目に見える物的環境=(巒頭らんとう)と、目に見えない気の流れ(理気りき)の双方を重視するものです。
このサイトでは巒頭にかかる凶殺などについても40個程度紹介をしていますので、それらも見て頂けたら嬉しく思いますよ。
フライングスター風水において建物の運気を決めるのは建築時期と建物の方位
まず、どのように建物の運気を量ることができるのかという話ですが、玄空飛星派は「建物の建築年月日が三元九運のどの時代に属しており、建物がどの方位を背にして、どの方位に向いて立てられているのか」によって建物の運気の流れを量ることが可能としています。
建物の建築時期の区分≪2024年2月から第9運≫
建物の建築時期については、「玄空飛星派風水(フライングスター風水)の基礎知識」の記事で書いた三元九運の時代区分のうち、建物の建築年月日がどの区分に属するかにより判断を行います。三元九運の区分のうち直近50年分程度を抜き出すと下記のとおりです。
元運 | 期間 |
第六運 | 1964年2月~1984年2月3日 |
第七運 | 1984年2月4日~2004年2月3日 |
第八運 | 2004年2月4日~2024年2月3日 |
第九運 | 2024年2月4日~2044年2月頭 |
つまり、2004年2月4日以降2024年2月3日までに建築された建物は第八運の建物であり、2024年2月4日以降に完成する建物については第九運の建物として運気の流れが第八運のものと異なるということです。
そして2024年2月4日以降現在は、この20年周期の元運が第九運に切り替わったばかりの時期に相当します。
第九運においてはさまざまな変化が訪れるものともされており、風水業界におけるそうした考え方についてはある程度「第九運20年間の予測」の記事にまとめておきましたので気になる方は見てみて頂ければ。
なお、2044年の立春以降は第一運に戻って180年間のスパンを繰り返していくものですよ。
建物の向き(坐向)の判断基準
次に建物の向き(坐向と呼びます)についてですが、建物の坐向とはいわば建物がどちらに顔を向けて立っているかを判断するものです。
建物の顔(坐向)は建物の背中側と180度反対にあるものですが、その坐向がどの方位に当たるのかを方位磁石等によって判定します。
その建物の坐向がどの方位なのかという点について、まず確認するのは以下の2点です。
- 建物の主玄関
- 建物に面するオープンスペース
なお、建物の向きをどう判断するかについては玄空飛星派を使用する専門家の中でも意見が分かれるところですが、上記の2点にをまずは見るようにとの判別方法は玄空飛星派を世界に広めた立役者であるレイモンドロー老師が「風水大全」により示しているところです。
とはいえ、レイモンド・ロー老師もここで書かれているように玄関方位がそのまま坐向になるかというとそんな単純なものではなく、実際には他の項目も加味して坐向の判定を行うものです。
では他の項目とは何なのでしょうか?たとえば次の判定基準はレイモンド・ロー老師とともにIFSA(国際風水協会)のグランドマスターであるスティーヴン・スキナー博士が著書「FLYING STAR FENG SHUI」により示している判断基準の一部です。
- 最も印象的な眺望の方位
- 大きな窓などの採光の最も多い面
- 宅内で最も社交的、活動的な面
- 接道状況
- 門の方位と玄関へのアクセス
実際にはこうしたものを加味して判断を行う必要があるということですが、こうして測定された方位区分は基本的なもので24区分になります。
基本的な24区分の方位については上の図にあげたとおりです。北を下にして書いた図ですので、真北が子、真東が卯、真南が午、真西が酉ということです。
ただし、24方位の境界付近に位置する場合の「替星チャート」というものが存在するため実際は24方位ではありませんよ。
また大きな建築を考える時に大切なことですが、建物の向きは原則として「建物にひとつだけ」です。マンションにおいてはマンション全体で同じ向きを持つもので、部屋ごとに異なる向きを持つものではありません。※
※一定の条件下での例外は存在します。
なお、方位境界の考え方について詳しくは「玄空飛星派の注意点/偏角・替星・空亡」を参照ください。
フライングスター風水の飛星チャートについて
飛星チャート
先ほどまでの流れで、建物の建築年月日と方位の割り出しによってその建物に流れる運気を割り出した表である飛星チャートを作成することができます。このチャートは中国に古代から伝わる神話的な図表のルールに基づいて作成されるものです。
ここでひとつ例を挙げます。
対象の建物は2004年以降に建造されているため第八運の建物です。また、子の方位(真北付近)に背中(坐山)があり、顔(向)を午方位(真南付近)に向けた建物となります。
例)第八運・子山午向の飛星チャート
飛星チャートは玄空飛星派において宅内の気の流れを表す道標となるもので、風水のルールにのっとって南が上側に来るように記載しています。
この建物は子山午向で南向きの建物であるため南に向けて矢印が向いているということです。「山」は坐山を示します。
九つに区切られたマス目は、北、北西、西、南西・・・といった方位の八区分と、建物中央を示します。一つの宮には3つの数字が記載されており、右上の数字を「向星」または「水星」、左上の数字を「山星」、下の数字を「運星」と呼びます。
※当サイトで第7運~第9運の飛星チャートについて24坐山すべてを公開しています。
第7運・・・「第7運の飛星チャート一覧」
第8運・・・「第8運の飛星チャート一覧」
第9運・・・「第9運の飛星チャート一覧」
※なお、先に書いた方位境界の替星チャートについては公開はしておりません。
気の流れは建物の中心「太極」から放射状に流れる
建物のチャートが特定できたら、それを実際の間取りにあてはめます。
建物の中心を風水では「太極(たいきょく)」と呼びますが、気の流れの中心もまたこの太極からみるわけです。
一軒家においては建物全体の太極から飛星チャートを描き、マンションなどの集合住宅においては自分が使用している部屋の太極から飛星チャートを描き、そこから八方位に向けた放射状に気の流れの図をあてはめます。
※この例は間取り図下側の南側(バルコニー側)が坐向となるため、南が上側に描かれた右のチャートを反転させて数字を重ねています。また特定を避けるため一部箇所に変化を加えてあります。
これで鑑定のもととなる図面が完成しました。
フライングスター風水/飛星チャートの読みかた
向星(水星)と山星
もう一度さきほどの図を見てみます。
飛星チャートにおける右上の数字を向星(水星)、左上の数字を山星と呼ぶと言いました。図には向星と山星のみを転記していますが、鑑定において重要なものはまずこの向星と山星のふたつです。
宅内の運気の流れにおいて向星は「財運」を表し、玄関、キッチン、リビングといった活動的なエリアにおける吉凶を見るものです。
そして山星は「健康運、人間関係運」を表し、寝室などの安静を取るエリアにおける吉凶を見るものです。
また、これらの向星山星の効果は建物の外側の周辺環境によっても影響を受けています。鑑定対象となる建物を守る近隣建物や山などの方位にある山星の効果は強い、建物付近の広場や川などの方位にある向星の効果は強いといった形です。
部屋の用途ごとの判断基準
向星は活動的なエリアの吉凶を見るもので、山星は安静にするエリアでの吉凶を見るのが原則と書きました。ざっとまとめると下記のとおりです。
部屋 | 判断基準 |
玄関 | 向星 |
キッチン | 向星 |
ダイニング | 向星 |
リビング | 原則向星 |
寝室 | 山星 |
書斎 | 山星 |
子供部屋 | 山星 |
風呂・トイレ等 | 凶星が好ましい |
お風呂やトイレ、クローゼット等については滞在エリアが短い場所になるため玄空飛星派においては原則吉凶を判断しません。そのため悪い星のエリアに配置することが望ましいというのが原則です。
また、和室などはその用途によります。たとえば寝室の代わりとして安静のエリアとして使用するならば山星で、リビング続きでリビングの延長として使用しているのであれば向星で判断するという具合です。
数の吉凶の移り変わりとそれぞれの意味
ではこの飛星チャートにおいて数字の吉凶をどう見るのかについてですが、第八運においては8が大吉、9が中吉、1が小吉の数字で他のすべては悪い数字となります。
そして2024年2月に始まった第九運においては9が大吉、1が中吉、2が小吉の数字でそのほかはすべてが悪いというように元運の切り替わりに応じて建物内部の方位の吉凶は変化していくものです。
つまり、いずれの時代においても1から9の数字のうち6つの数字は悪い意味を持ち3つの数字のみが良い意味を持つ、大吉の数字は次の時代においては衰退して悪い数字に切り替わるものだということです。
次に数字の持つ意味についてですが、下の表は1から9までの数の第八運における吉凶やその意味の一部を示したものです。
数 | 五行 | 吉凶 | 意味 |
1 | 水 | 中吉 | 学問での成功・子孫繁栄 |
2 | 土 | ※ | 病・吝嗇(けち)/治癒※ |
3 | 木 | 凶 | 事故・盗難 |
4 | 木 | 凶 | 不貞・狂気 |
5 | 土 | 大凶 | 突発的な災い・破滅 |
6 | 金 | 凶 | 法的トラブル・事故 |
7 | 金 | 凶 | スキャンダル・破壊 |
8 | 土 | 凶 | 停滞 |
9 | 火 | 大吉 | 成功・結婚 |
ですが、2はもともとが病の意味を持つ大凶の数字とされており、第9運に入った直後にはまだ吉星として2を扱うことは困難だろうと考えている鑑定士が多いことは事実です。
第9運に入って数年から十年程度経った後に2は小吉の星として治癒等の意味を持つようになると考える方が多いかと思いますよ。
数の組合わせによる意味
上にあげたのは1から9までの各数が単独で持つ意味についてですが、実際の鑑定においては各セクションにある数字の組み合わせも加味して判断を行います。以下に有名な例を少しだけ挙げておきます。
1と4(水生木)・・・良い組み合わせ。学問・恋愛・美容に良いとされます。
2と3(木剋土)・・・悪い組み合わせ。いざこざや喧嘩を意味します。
2と5・・・(土と土)大凶の組み合わせ。突発的な病や死、経済破綻を意味します。
6と7・・・(金と金)悪い組み合わせ。争いや金属による怪我などを意味します。
6と8・・・(土生金)良い組み合わせ。金銭的な利益があるとされます。
これら数の組合わせによる吉凶は山星9つと向星9つの計81種類すべての組み合わせにそれぞれ意味があります。
また、これらの数の組み合わせの中には「特定の年にその方位を使うとある一定の凶効果、もしくは吉効果」が出るとする数字の組み合わせも存在します。それらの年をどのように判断するのかについてはこの記事の下に書く「年飛星」の考えに基づくものですよ。
太極(建物の中心)の象徴について
太極(建物や居住する部屋の中心)の数字の組み合わせについてはその建物全体を象徴するものとされています。
ですので例を挙げれば建物中心の山星向星の組み合わせが2・5の家は住むべきではない、6・8の家は財運に好ましい家といった形になるわけです。ただしこれら太極のチャートについても様々な観点があるためにあくまで判断の一要素であると考えて頂けたら。
補足:玄関の向きだけで建物の向きは判断できません!
過去と現代の住宅様式について
こうしてみてきたように、建物の気の流れを割り出すために必要な情報は建物の建築時期と建物の顔(坐向)がどちらに存在するのかの二点だけになります。
ただしその坐向の判断についてですが、例えばこの100年間だけを考えても住宅の建築様式の変化が著しいことは例を挙げるまでもないことかと思います。
たとえば日本においても、それこそ地方における古い時代の住宅建築を考えたときに「玄関と縁側が庭の方向を向いた家」が主流の建築様式であったことは想像に難くないと思います。
坐向を判断についていろいろな基準を示しましたが、古い時代の住宅のように玄関と縁側(今で言えば掃き出し窓とウッドデッキです。)が同じ側を向いており庭というオープンスペースが同じ方位に存在する。そのようなケースであればほぼ確実にその方向が建物の顔と判断してよいわけです。
ですが高度成長期以降の都市部の人口過密化に伴っていまの日本における居住用建物はオープンスペースつまり庭のない物件は無数にありますし、いわんやマンションという話です。
坐向、建物の顔の方位というのはいわば建物内部に外部の気を取り込む方位のことを指すわけですが、玄関があってもその玄関の先には隣の家の壁が立つだけで、玄関側の方位に窓すらない、代わりに南側に大きなテラスとオープンスペースがあるなんていう家も無数に存在しています。
また、マンションを考えても玄関やメインエントランスとベランダの方位が反対側にある例はとても多いです。そうした場合、まずエントランス方位での坐向を確認すべきですが、実際には周辺環境との兼ね合いもありますがベランダ方位に坐向が来る例の方がどちらかと言えば多いのではないかと考えています。
そして、そうした判断を行うためには建物の周辺環境の情報が必須です。
もっといえば大きなマンションなどにおいてはそもそもエントランスもベランダも複数方位にあるケースもあろうかと思います。そうした建物の向きをどう判断するのかという問題が出てくるわけです。
そして、そうした問題についての結論は、「坐向があいまいな物件については実際の生活状況を聞き取ることで象意を重ね合わせるしか判断基準はない」というところです。
つまり、引っ越しや新築などといった「入居歴のない物件の鑑定」は相当注意して坐向の判断を行う必要があるということです。簡単に坐向を特定してしまってはどう考えても誤りのもとにしかならないですので・・・。
沈氏玄空学「陽宅三十則」における坐向判断の注意について
また、一部書籍や一部の鑑定士は「玄関のある方位が建物の顔です」あるいは「マンションにおいてはベランダのある方位が建物の顔です」という立場の方がいることは存じておりますが・・・
そもそも玄空飛星派を現代の世に広めた初めの書物は沈竹礽(しんちくじょう)が100年以上前にまとめ、その息子が沈竹礽の教えを1937年に出版した「沈氏玄空学」であるとされていますが、その沈氏玄空学に次のような記載があります。
凡新造之宅,屋向和门向并重,先后屋向断外六事之得失,倘不验再后门向断之。若屋向既验,不必复参门向,反之,验在门向,亦不问屋向也。
ー沈竹礽「沈氏玄空学」
「新築の居宅において家の向きと扉の向きはどちらも重要であるが、家の向きが判断されている場合には扉の向きは重要視するものではない。」といった内容が書かれています。
これは沈氏玄空学における「陽宅三十則」といわれるものの一つです。
この陽宅三十則が書かれているのは100年以上も前の話ですが、先に書いたようにこの100年間で住宅様式は著しい変化を遂げています。にも拘わらず、100年以上前の時点で「玄関と建物の向きは一致しないケースがある」と書かれているわけです。
ですので「坐向はすべて玄関のある方位です」「マンションの坐向は部屋のベランダのある方位です」というように単純に決めつけのできるものではありません。
専門の鑑定士によっても意見が異なる難しい部分がここにありますが、外見で判断できないケースでは最終的には坐向の候補を絞ったうえでそこでの生活状況の聞き取りから判断するしかありません。病院での問診に近いようなものです。
風水鑑定の世界においては坐向を誤って判断したために事態を悪化させた例は数知れず存在します。坐向が違えばチャートが全く異なるために良かれと思った化殺がすべて裏目に出ている可能性があるということですから。
また、もし自分自身で知識を得て坐向を判断しようというときには複数の候補を出したうえでどちらがより生活状況に合致するかを判断することが望ましいと考えます。
フライングスター風水(玄空飛星派風水)においてもっとも大切な要素は「坐向をどう判断するか」この一点に尽きますので。
※なお、陽宅三十則については先に挙げたレイモンドロー老師の「風水大全」にそのすべてが紹介いただいています。くわしく知りたい方はぜひどうぞ。
ちなみに、「玄関(エントランス)が建物の向」とする考え方はおそらく談氏玄空学の観法の影響が強い流派の方なのかな・・・と少し考えていたりもしますが・・・?
本命卦
本命卦(ほんめいか/ほんめいけ)とは個々人が持っている属性のようなもので、ここでは建物の飛星チャートと個人の属性の関係を計るためのものです。
本命卦の算出方法
本命卦はその物件の使用者、居住者などの生年月日と性別から割り出します。
一年の扱いを2月4日前後の立春を基準として年ごとに分け、それを男女別に分けるもので、例を挙げたら1980年5月生まれの男性の本命卦は坤2,女性は巽4,1990年3月生まれの男性の本命卦は坎1,女性は艮8となるということです。
別記事に一覧表を作成しましたのでそちらをご覧ください。
本命卦の表す属性
本命卦にはそれぞれに五行による属性があります。
本命卦 | 名前 | 五行 |
1 | 坎(かん) | 水 |
2 | 坤(こん) | 土 |
3 | 震(しん) | 木 |
4 | 巽(そん) | 木 |
6 | 乾(けん) | 金 |
7 | 兌(だ) | 金 |
8 | 艮(ごん) | 土 |
9 | 離(り) | 火 |
命卦の使用方法
このように算出した命卦は、その命卦を持つ方が宅内における各部屋を使用する際にどのような影響があるかを見るものです。
命卦と同じ山星や向星の部屋を使用した際に、風水の良い影響、悪い影響を強く受けるというものがメインの話になります。
例)命卦1(坎)の方が山星1となる寝室で就寝した場合、2024年現在の山星1は吉星であるため、吉の影響を強く受ける。
例)命4(巽)の方が向星4の玄関を使用した場合、向星4の悪い影響を強く受ける。
といった具合です。この命卦の考え方、影響を受ける方位については複数の検討事項がありますよ。
フライングスター風水の年飛星について
ここまで見てきたのがひとつの建物を考えた際に「その建物が独自にもつ建物内の気の流れ」でした。
玄空飛星派においては、このほかに「どの建物も共通に持つ」、「毎年変動する建物内部に流れる気の流れ」というものがあります。
実際には年飛星のほか、月、日、時といったものまでが存在するのですが実際問題として悪い方位への対処、「化殺」のことを考えても年飛星までの検討で十分だと考えています。
建物独自の山向星があり、それらと年飛星の組み合わせまでは考慮に入れますが、それに影響力の小さい月飛星を考慮に入れた場合、仮にもとの山向星、年飛星、月飛星で三つの五行が現れた場合に結局のところ影響力の小さい月飛星を無視する選択しかできないわけですから。
また毎月化殺を変化させるというのも大多数の方にとってはほぼ不可能に近いものだと思いますし。
とはいえ実際には良い年飛星が巡る方位に関してはさほど注目すべきと考えているわけではなく、年飛星の危険な方位やもともとの山向星と危険な形で年飛星が組み合わさった場合に注意するべき、というのがわたしが考えている基本的なスタンスになります。
ですのであくまでも原則はもともとの建物のチャートです。年飛星で好ましい星が巡るからその方位が吉だ!というのはもともとの建物の山向星との組み合わせまで見ないと吉凶の判断はできませんよ。
この記事では年飛星の詳細までは解説しませんが、「玄空飛星派の年飛星」の記事で年飛星について解説を行っています、よかったらご覧くださいね。
フライングスター風水のレメディ(化殺)について
ここまでの内容で、フライングスター風水(玄空飛星派風水)がどのように宅内の運気を測るのかについて書いてきました。
実際の鑑定においてはこの鑑定結果を基にして「その宅の運気をどのように調整するのか」を検討します。
要は五行思想などに基づいてその宅の方位をどのように使用したらよいのか、どのような家具などを配置したらよいのかを検討するためのスキームが化殺理論だということです。
フライングスター風水においては、ここまでの内容で判断した気の流れを家具やアイテムなどで悪いものを抑える、あるいは財運などを好ましい状態に整えるといったところまで行うことで完成するものと考えてよいと思います。
化殺についての詳細は「フライングスター風水のレメディ(玄空飛星派の化殺)とは」の記事にまとめておきましたのでよければそちらもご覧ください。
フライングスター風水で結果が出ない、効果なしのとき考えてほしいこと
さて、このサイトを見て頂いている方の中にはすでにご自身でこの風水技法による鑑定を受けた、あるいは自分で鑑定を行った後の方もいることでしょう。
そうした中で判断結果に基づいた部屋の用途を使用してもしっくりとこない、化殺を行っても効果が上がらないといった場合、そうしたときに考えてほしいことが5つあります。
①坐向の判断を間違っている
これまでみてきたようにこの風水技法においては建築年月と建物が顔を向ける方位を測ること、その2点から建物内部の気の流れを測るチャートを特定するものですが、この坐向の判断と方位の測定は落とし穴が多いです。
まず、この記事でも書いたように坐向、つまり建物の顔がどちらを向いているかという判断は専門家の中でも判断が分かれるところではありますが、現代の住宅、とくにマンションにおいては建物の顔の判断は複雑なものが多く、一律の基準で判断することはできません。
もしもあなたが行った鑑定が玄関の向きを坐向として判断した、あるいはマンションのベランダ側を坐向として判断した場合、その判断そのものが誤っている可能性が考えられるというわけです。
坐向となりうる可能性が二つある場合にはその二つのチャートを重ね合わせる中で実際の生活状況を聞き取りながら判断するしかない、それが三つならば三つのチャートを作るしかありません。
また、建物の周辺のオープンスペースや接道といった建物外部の状況判断に(少なくとも私が学ぶ複数の流派における玄空飛星派において)必須の要件です。
ですからわたしは間取り図のみを見て風水の判断を行うことはありません。もし間取り図のみをみて坐向を判断できるとする風水師がいた場合、すくなくとも私はその方を信用することはできません。
そうした理由などにより誤った坐向をもとにしてチャートを適用させて化殺を行ったところで事態を悪化させるだけの結果しか及ぼさないということは何の不思議もないことです。
②方位の測定誤り
方位の測定、簡単なことのようで難しいものです。
試しにコンパスで方位を測る場合、2,3日に分けて3か所程度の場所から建物の方位を測定してみるとわかると思うのですが、コンパスというものは様々な要因でかんたんに方位がずれるものです。
場合によっては5度~10度程度ズレが生じることも珍しくありません。
チャートの特定の際には、24坐山の境界付近、つまり替星チャートの適用区分付近に向きが位置する場合など、たとえば3度方位測定がずれた場合には判断ができません。
仮に専門家の鑑定の際に「自分で地図上に北記号を書いてほしい」といった指示を受けた場合、方位測定に関して的確な指示があり測定を行うのであればまだしも、そうした指示もなく一般の方に正確な方位測定を行うことはとても困難だと考えています。
それであれば偏角を算出したうえで地図上から方位を求める方がよほど精度は高いです。それは私が計測を行ってもおなじ。羅盤や、方位測定専門の機器を使用しても1度未満の精密な精度で方位測定を行うことはほぼ不可能です。
フライングスター風水をご自身で学んで実践する方が最も陥りやすい間違いがこの方位の測定誤りであるかもしれません。
また、「フライングスター風水の注意点」の記事でも書いていますが、偏角というものは常に移動を続けているものですので、たとえば5年前に受けた鑑定以降に偏角の移動などがあってそのために建物の方位が境界付近に向いたことによりチャートそのものが変化している、という可能性だってあり得ます。
③年飛星を考慮していない
この記事で紹介してきたように、建物は山星と向星のその建物独自のチャートを持つもので、原則としてこの建物独自が持つチャートが最も影響力が大きいものです。
ですがこれらと別に年飛星の影響力というものは侮れず、もともと好ましい方位であったものが年飛星と山向星の組み合わせにより好ましくない方位に変化してしまう年といったものは存在します。
たとえばそれが玄関や寝室といった方位に該当するのであればやはりそれらの影響も大きいというわけです。
④個人の持って生まれた宿命とタイミング
「風水について」の記事にも書きましたが、中国にこんな言葉があります。「一に命、二に運、三に風水、四に積隠匿、五に読書」という言葉あります。
つまりそれは「風水よりも持って生まれた宿命とそのときそのときの運気の方が影響力は強い」ということを意味するものです。
中国占術においてこの宿命と運気の流れを推し量るための技法は四柱推命だというわけですが、たとえばこの四柱推命において財運が全く悪い時期と好ましい時期で風水による財運の効果が変化するのは当然のことだとも考えます。
財運だけでなく病に気を付けるべき時期、人間関係に苦しむ時期、自身に不利なことが重なってしまう不運な時期など・・・そうしたものは誰しもがあるものですので風水の良い住宅に住んだからと言って人生がすべてうまくいくということはないものです。
また、風水だけでなく四柱推命においても、たとえば「1000万円稼ぐことができる」といった具体的な判断ができるものではありません。
具体的にどのくらい稼ぐことができる、つまり「量」というものについてはこれらの占術から導くことはできません。それは風水における財運アップの技法を使用した場合も同じです。
ですから「これで~円稼ぐことができる!」という風水鑑定士はおそらくいないと思いますし、仮にいたとしたらわたしからすれば信頼することはできない方だと考えています。
それはきっと風水だけでなくて経営コンサルタントや医療の世界、人間心理を扱う専門家であっても同じこと。よほど確定的な状況でもないのに、結果の保証をうかつに行う専門家は信頼に値しないものですから。
⑤個人の行動
そして、最後にはなんといっても個人の行動です。
たとえば「風水の技法を駆使すればどんな商売を行っていても売り上げが上がる!」だなんてことはあり得ません。極端な話を言えばいくら風水が良くても誤診ばかりの病院に患者が来るわけはありませんし、味の悪い飲食店は流行るわけはないというわけです。
風水は魔法ではなくてあくまでも本人の行動、あるいは努力を後押しするものだとわたしは考えています。
商売で利益を上げたい場合にはまず自身の商売の業界の動向を重視すべきですし、時代に応じた商売の仕方を工夫してより良いサービスを提供することで売り上げを向上させるよう行動することは基本です。
それは四柱推命も風水も同じことです。
もちろん商売のお話だけでなくてたとえ健康運の良い時期に最高の山星の寝室で就寝していても自堕落な生活の中で健康を損なう生活を送っていればそれに伴う結果が訪れるのは当然のことです。
病気が疑われるのであれば風水改善よりも先に病院に行くべきです。医療技術を一切使わずにこうした占術のみですべてを決断するべきではありません。
もちろん人間関係運も同じことで、いくら四神相応で山星の良い方位に就寝していたところで、横暴で利己的なふるまいが前提にあるならば人間関係の改善が見込むべくもないことは当然の話ですから・・・。
私は風水や四柱推命の運というものと結果の関係は「運×行動=結果」だと考えています。
どんなに運気が良くても行動を起こさないことには結果は生まれるものではありません。すべての運気はそれに伴う適切な行動があってこそ結果を生むものです。
ですからあくまでこうした風水や四柱推命というものは依存する対象ではなくて、自身の行動の後押しをするために利用するものだと捉えて頂ければ幸いです。
また、これら①~⑤についてはどれも鑑定に加味すべき事柄ですが、実際に受けた鑑定において事象がまったく現実に合わないなどといった場合にはまず①坐向の判断誤りと②方位測定誤りの問題を検討するべきだと考えています。
それらの問題については24坐山の方位境界に関する以下の記事を読んでいただけると問題解決の一助となるかもしれません。ご自身で判断を行う方も、あるいは知識のない専門家に依頼して効果が実感できない方もこの種の問題で判断誤りを疑われるケースがとても多いと感じますので・・・。
終わりに(鑑定例は別記事です)
長い記事でしたがここまで読んでいただきありがとうございました。ここで書いたのは玄空飛星派風水の理論のあらましと基礎についてですが、玄空飛星派の理論においては宅内に流れる気の流れをこうした形で判断するものです。
たとえば次の鑑定例は入居後1年程度住んだ後、体調の不良を感じていた20代男性の賃貸物件です。化殺の事後までお話を聞くことができましたので例としてとても参考になるのではないかと考えていますのでよければそちらもご覧いただければ幸いです。
この記事で書いた理論を基に判断した住宅の運気の流れについて、「その宅においての各方位をどのように使用したらよいか、どのように家具等を配置したらよいか」を実施することを「化殺(レメディ)」と呼びます。その化殺については「フライングスター風水のレメディ(玄空飛星派の化殺)とは」の記事にまとめておきましたのでそちらも併せてご覧ください。
また、実際の鑑定例については住宅とスタバ渋谷店(スタバは風水を利用していることでも有名な企業で、スタバ渋谷ツタヤ店は3万店ともいわれるスタバチェーンの中で世界一の売り上げを誇ったことがある店舗です)の例を挙げています。
また、ご自宅のチャートがどのようなものか考える際に参考になるであろう7,8運の建物についての飛星図は一覧を記事にしておきました。
替星チャートや玄関と家の向きの件も含めた「玄空飛星派の注意点」の記事や、年飛星の記事や、ここで書かなかった建物の周辺環境に関する代表的な避けるべきものについてまとめた「選んではいけない物件10選」など他の記事も読んでいただけたら嬉しく思いますよ。
また、わたし自身が行う鑑定について、現在はココナラからのオンライン鑑定のみ受付をさせて頂いています。そちらへのリンクも貼っておきます(鑑定書サンプルもつけています)ので興味のある方はご覧くださいね。
また、この玄空飛星派風水に関する日本語の書籍については自分の知りうるものを「日本語書籍リスト」の記事にまとめておきました。学ばれる方はそちらの記事も参考にして頂けたら。
それではこの記事はここまでです。ここまで読んでいただきありがとうございました。
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