フライングスター風水の注意点/偏角・替星・空亡

 この記事をご覧いただいているあなたはご自身で玄空飛星派を書籍等で勉強したのちに疑問を感じてこの記事にたどり着かれた方かもしれません。

 本などに沿って宅の向きを自分で判断してみたが飛星チャートの内容がいまいちしっくりこない、山星がいいはずの寝室で眠っているのに寝つきが悪い、、、など。あるいは他の鑑定士さんで鑑定を受けた後、生活の中で疑問を感じてこの記事にたどり着いたかたもいることでしょう。

 玄空飛星派の鑑定においてなにより重要なのは「どのチャートを適用するのか」という一点に尽きるかと思うのですが、ここではその注意点を3点挙げておきます。

  • 地図から方位を測定する際には偏角というものを考慮する必要があり、地球の磁場は年々移動し続けているものである
  • 方位の区分は24種類ではなく、その方位区分の境界に位置するときに使う特殊なチャート「替星チャート」がある
  • 方位区分の境界にちょうど位置する場合は「空亡」に該当し、その建物は居宅に使用不可とされている

 この記事はフライグスター風水(玄空飛星派風水)の理論をある程度把握した方向けの記事です。理論の概要については先に「フライングスター風水のあらましについて」の記事をご覧ください。

 なお、この「あらまし」の記事に書いたように一軒家における玄関やエントランスの方位はすべて建物の向だ、またはマンションにおけるベランダの方位がすべて建物の向だとする流派があればそれは誤りです。

 誤った坐向をもとにしてチャートを作成することは鑑定の明らかな誤りを生むものなので注意してください。

目次

偏角(へんかく)について

 偏角ってなに?と思われる前に、この章での結論は下の三つです。

  • 建物の方位は永遠に同じではない。
  • 地図上の北(真北)は磁石で測る北(磁北)とは異なるもので、風水では磁北を利用
  • 地図から角度を求める際には偏角を考慮しなければいけない。

 偏角とは地図上の真北と磁石で図った真北の角度のずれのことを指します。

 私たちが見慣れた地図はメルカトル図法と言われる方法で作成されたものですが、球体である地球を四角形の地図に変換したものですから、赤道から距離が離れるほどに実際の大きさより拡大された形で地図上は表示されています。

 参考に、メルカトル図法の縮尺を実際の大きさに再変換してくれるHP、「true size of…」で日本とヨーロッパを比較してみました。意外と日本大きいですよね笑

 赤道からの距離が離れるほどに地図上の大きさも北の角度もズレが大きくなっていくというわけです。

 、、、と、大きさについては余談ですがここで大事なのは角度の話です。

 地図上の真北は磁石で図る磁北とズレが生じるわけですが、風水において重視するのは磁石で測る方の「磁北」です。

 球体を平面に落としているわけですから、当然赤道から離れれば離れるほど実際の北の方位は地図上での真上と角度がずれてくるわけです。

 ですので地図から方位を見る際にはこの地図上の真北と磁北とのズレの角度、「偏角」を差し引きする必要があります。

 偏角については国土地理院の「磁気図」で日本国内の地域ごとの偏角を確認することができます。例を挙げれば東京の千代田区であれば偏角は7.66度となり、地図上の真北から見て磁北は西に7.66度ずれているということになります。

 ですので、地図上から角度を求めようとする場合にはこの偏角を加味して考える必要があるということです。

参考HP:国土地理院「磁気図」

 また、この偏角、、、というか地磁気そのものについてですが、年々変化を続けており、国土地理院の発表によると過去200年間で実に7度移動をしているとのことです。つまり江戸時代の日本においてはおおよそ地図上の真北と磁石で測った磁北が一致していたということです。

 なお、この偏角の移動については近年加速していると言われており、国土地理院の磁気図で確認をしても、日本における多くの地域でこの10年間に実に0.5度程度偏角が移動しています。

 そのためこの偏角を考慮しないことには鑑定はできるはずがありません。

 また、この偏角の移動があるため、建物の持つ方位というものは永遠に同じではなく、時間の経過とともに変化を遂げていくものだということです。

 また、この偏角は地域によって異なるため、仮に正確な真北が記載されたものであっても間取り図や設計図のみからは正確な磁北を導くことはできず、鑑定を行うことはできません。

 また「フライングスター風水のあらまし」の記事でも書いたように、坐向の判断にはその物件の周辺環境の情報が必須ですし、方位の測定はこの技法においてもっとも重要なところです。

 そうした理由があるために「間取り図、設計図のみから」や「依頼者が計測した方位をもとにして」鑑定を行おうとする鑑定士のことを私は信用しません。方位測定は様々な条件で容易に方位のズレが発生しますので風水などにおける1度、2度単位の測定を行うことは簡単ではないのですよ。

替星チャートについて

 当サイトの「第8運における飛星チャート一覧」などで挙げているように、玄空飛星派においては一つの元運における宅の向きは15度ずつの区分に応じての24坐山が原則になります。

 ですが実際にはこの24坐山の境界付近に建物が向いている場合の注意点があり、24坐山はすべてのチャートを表すものではありません。

 具体的には、方位区分の境界付近に建物が向いた場合においては通常の飛星チャートが機能せず、そのかわりに「替星(たいせい)チャート」と呼ばれるチャートを使用するべきケースがあります。

 流派によって方位の境界をどこに設定するかは諸説あり、方位区分の境界から数えて1.5度以内、もしくは3度以内の区分に該当するときには替星チャートの適用を検討すべきというのが偉大な先人の方々が伝えている観法になります。

 なお、ここで「替星の使用を検討」と書いたのは、この区分に該当したから必ず替星チャートを適用すべきというものではなくて、1.5度以内もしくは3度以内に入った場合には飛星チャートか替星チャートの「どちらかで」チャートを判断すべきものだということになります。

 なお、この替星チャートについては各方位区分の(チャートが切り替わる)境界ごとに異なるチャートが存在しますのでひとつの時代(第八運、第九運など)ごとに32のチャートが存在します。

 要はその区分内に入った際に、どちらが正しいチャートであるのかは実際の両方のチャートを作ってみて生活の状況を聞き取って象意を重ね合わせていくしか判断方法はありません。

 そのため引っ越しや新築を考えた際にはこの境界付近に位置する方位を持った家というのは、運気の流れが「入居するまで特定できない」家になってしまうというわけです。

 当然ながら引っ越しの際にはこうした替星区分の物件は住まないほうが好ましいわけです。

 そう考えると現実問題としてこの風水技法において考慮すべきは24坐山の方位区分のみでなく、それらの境界線上の32方位を加味した56種類と考えるべきなのが当然の帰結になります。

 ですからここでも「自分で方位を測ること」「住宅情報サイトの間取り図記載の方位をうのみにすること」がどれだけ危険なことかわかっていただけると思います。方位が5度ずれた鑑定に信頼性はありません。

空亡について

 方位区分の境界付近に位置した場合には替星チャートの使用を検討する必要があると書きました。

 ですがこの方位区分の境界について、建物の向きが方位区分のちょうど境界と同じになってしまった場合のことを「空亡(くうぼう)」と呼びます。

 空亡の家については「訴訟、破産、重病、一家自滅」などの意味を持つもので陰陽宅使用不可とされており、住居にしてもお墓にしても使用してはいけない方位になります。

※陰宅とはお墓のことで、陽宅とは住宅のことです。

 ここにあげた替星チャートや空亡の存在はまた、風水を使用しての引っ越しや新築の際には方位区分の境界付近を向いた家を建てることをお勧めしない理由になります。

 運気の流れが入居するまで確定せず、かつ偏角の移動に伴って空亡に陥る恐れがある物件になるわけですし、空亡の居宅に対する対処法などは存在しません。

 空亡においてはそもそも方位がどちらかの区分に該当するまでチャートを描くことができないもので、チャートが存在しない以上化殺を行うことはでき、対策は存在しません。

 正確には空亡についてはその方位区分ごとに4種類の空亡が存在しますが、いずれも良いものではありませんのでこれらに近しい方位の家には初めから住まないという選択をすることが好ましいと考えます。

おわりに

 ここまで書いてきたようなものがフライングスター風水(玄空飛星派風水)における鑑定の際の注意点です。

 つまりこれは自分で判断を行おうとする際にも、鑑定士があなたの自宅を鑑定しようとする際にも注意すべきものだということです。

 たとえば「フライングスター風水で鑑定を受けたけど内容が現実としっくりこない」といった例は多くのケースでこうした状況やそもそもの坐向判断を誤ったことによるチャートの間違いが多くの原因になります。

 何度も書きますがこの風水技法における最大のポイントは「その物件に対してどのチャートを適用するか」この一点につきます。そこを誤ってしまうと吉凶の方位は異なりますしよかれと思って行った化殺が事態を悪化させる原因ともなりかねないものですから。

 風水が目に見えない気の流れといったものを扱う以上、あなたからお金を得て利益を貪ろうとする人たちに騙されないようにするためには何より知識が必要だと考えています。

  現実にわたしがざっとネットを見渡すだけでもフライングスター風水(玄空飛星派風水)を名乗る鑑定士があまりにもずさんな基準で鑑定を行っている例は無数に見受けます。

 むろん私だけが正しい風水を使用するなどというわけはなく他にも素晴らしい、私よりも力を持った鑑定士はたくさんみえますが、それでもそれ以上に信頼のできない鑑定士は数多いと感じます。著名な方であってもそれは同じで、名が売れていることは理論の正確性の担保にはなりません。

 知識を仕入れることはまた身を守ることにもつながります。自身にある程度の知識があればそうした方の理論の曖昧さに気づくことができると考えており、それがわたしがこのサイトを立ち上げた理由のひとつですから。

 それではこの記事はここまでです。ここまで読んでいただきありがとうございました。

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