八宅風水(八宅派風水)のあらましについて

 八宅風水(八宅派風水)とは、住居内の気の流れを見るために中国で古くから一般的に使用されてきた技法で、日本の家相学(≒九星気学)の諸流派のもとともなったとされている風水技法です。

 この技法は表立って一般的に使用されてきた歴史がとても長く、日本における中国風水としては最も有名であろうことから風水に興味のある方は名前や理論をご存じの方も多いかもしれません。

 この八宅派風水においても、風水というものは宅外の周辺環境を無視して判断ができるものではなく、周辺環境(=巒頭らんとう)と宅内の気の流れ(=理気りき)の双方を見てはじめて風水の善し悪しを判断するものです。

 住宅の外的環境の影響力は流派を問わず宅内の気の流れの善し悪しと同等以上だと言われます。宅内環境のみで風水の善し悪しを判断する理論は中国の伝統風水には存在しませんのでご注意くださいね。

 住宅の周辺環境についてはこのサイトでも40個程度の凶となるものを紹介していますのでよければご覧くださいね。

※なお家相学においては「鬼門」の概念が有名ですが、中国風水において鬼門を重視することはありません。

目次

八宅風水(八宅派風水)と後天八卦の方位区分

 この八宅派風水はその名のとおり、各々の住宅を八種類に分類するものなのですが、先にこれらの風水理論の基となっている八方位区分の大元である後天八卦(こうてんはっけ)についてかんたんに説明しておきます。

 中国占術の長い歴史の中で、紀元前4500年頃の人とされる伏羲(ふっき)という人物が陰陽理論から卦を編み出すとともに先天八卦というものを発明し、時代を下って紀元前12世紀~紀元前11世紀ごろの周王朝の王であった文王(ぶんおう。周文王とも)が卦の配置を組み替えて後天八卦を発明したとされています。

 この先天八卦や後天八卦は様々な風水技法の中で使用し様々な意味を持つものですが、ここでは八宅派風水の方位区分に関連して後天八卦を紹介しておきます。

 図は北を下に書いたもので、北方位が(かん)、北東が(ごん)、東が(しん)、南東が(そん)、南が(り)、南西が(こん)、西が(だ)、北西が(けん)でそれぞれ図のとおり卦が配置されたものになります。

 この後天八卦については各方位のほかに、北(坎)が冬や水、東(震)が春や木、南(離)が夏や火、西(兌)が秋や金といったように季節や時間、五行や人物といった様々な要素を持つもので、「玄空飛星派における九運の予測」の記事に書いた離卦の意味はこのうちの一つです。

 そして八宅派風水ではこの後天八卦における八方位区分を使用して住宅内部の気の流れを判断するものです。

 宅の種類を分ける基準を坎(北)、震(東)、巽(南東)、離(南)の4つに持つものを東四命(東四宅)グループ、艮(北東)、坤(南西)、兌(西)、乾(北西)の4つに持つものを西四命(西四宅)グループと呼びます。

 そしてこれら八種類のそれぞれにおいて八方位ごとに異なる気の流れが存在すると説くものです。

  • 八宅派風水では住宅を八種類に分け、それらの宅内の気を八種類に区分する
  • 分類における方位は後天八卦の方位区分に準ずる
  • 東四命(東四宅)は北(坎)、東(震)、南東(巽)、南(離)
  • 西四命(西四宅)は北東(艮)、南西(坤)、西(兌)、北西(乾)

東四命(東四宅)宅盤/坎宅・震宅・巽宅・離宅

 ではここでその八種類の住宅における吉凶区分がどのようなものか見てみます。まずは東側に吉方位の多い東四命(東四宅)グループからです。図の全ては北を下に、南を上に書いたものですよ。

 これらの図は緑色が吉方位、赤色が凶方位としており、グループの4つの全てが同じ吉凶方位を持つものだとわかります。

西四命(西四宅)宅盤/艮宅・坤宅・兌宅・乾宅

 次に西側に吉方位の多い西四命(西四宅)グループです。ここも図の全ては北が下側ですよ。

 これが八種類の宅盤すべてです。

 つまり東四命(=東四宅)グループにおいては北、東、南東、南の4方位が吉方位となり他の全ては凶方位、西四命(=西四宅)グループにおいては北東、南西、西、北西の4方位が吉方位となり他のすべてを凶方位とするのが八宅派における分類だというわけです。

星(八遊星はちゆうせい)/生気・天医・延年・伏位・絶命・五鬼・六殺・禍害

 先に記した八種類の宅盤における各方位の吉凶を「八游星(はちゆうせい)」と呼ぶのですが、さらっと八遊星の吉凶について書いておきます。まず吉方位のグループからです。

 八遊星は吉星4つ、凶星4つで構成されるもので、なんとなく名前を見ると吉凶ていどの想像は付きそうなものも多いですが、基本的なルールとしてはこれらの吉凶の中でおおよその順位付けが存在します。

 吉グループにおいては最大吉が生気(せいき、貧狼(とんろう)とも。)、大吉が天医(てんい。巨門(こもん)とも。)、中吉が延年(えんねん。武曲(ぶきょく)とも。)、小吉が伏位(ふくい。輔弼(ほひつ)とも。)、という順番です。

 次に凶グループの八星については、最大凶が絶命(ぜつめい。破軍(はぐん)とも。)、大凶が五鬼(ごき。廉貞(れんてい)とも。)、中凶が六殺(ろくさつ。文曲(ぶんきょく)とも。)、小凶が禍害(かがい。禄存(ろくそん)とも。)という順位になりますよ。

 これらの大まかな意味は以下のとおりです。

 ただし、ここに挙げたのはあくまで基本的な順位付けと意味ですので流派や技法、あるいは卦ごとに応じて変わることもありますのでここに記すものはあくまで基本的なものとして考えて頂ければと思います。

  • 八宅派風水では宅盤ごとに4つの吉方位と4つの凶方位があり、それらを併せて八游星と呼ぶ
  • 吉グループの順位付けは最大吉から①生気、②天医、③延年、④伏位
  • 凶グループの順位付けは最大凶から①絶命、②五鬼、③六殺、④禍害
  • 吉凶グループの順位付けは技法、卦など様々な要因で変化もあり

真北と磁北

 ちなみに、風水の方位区分においては、八宅の方位区分も八游星の方位区分もすべて地図上の真北ではなくて磁石で計測した磁北というものを使用します。

 「玄空飛星派風水のあらましについて」の記事にも書きましたが一般に目にするメルカトル図法による地図は北極、南極に行くほど地図が引き延ばされたものなので地図上の北は磁石で計測する北とズレが生じるものです。

 その地図の真北と磁石で計測した磁北のズレのことを「偏角(へんかく)」と呼びますが偏角は北海道で10度程度~沖縄本島で5.5度程度と日本国内でも地域により差があるもので、地図の北や、まして間取り図の北方位は当てにできるものではありません。

 国土地理院のHPで地域ごとの偏角が確認できますよ。

八宅の分類基準①本命卦について

 では、上にあげた東四命、西四命の八種類はどのように判断するのでしょうか?

 この区分けの方法については大枠として二つの分類方法があり、ひとつはその住宅の住人ごとの生年と性別によって求める「本命卦(ほんめいか、命卦とも)」というものと、もう一つは住宅が持つ運気の流れである「宅卦(たくけ)」と呼ばれるものです。

 先にこの命卦による分類を説明しておくと、命卦は個々の住人において変わるもので、ひとつの住宅に住む家族が5人いた場合には5人それぞれで命卦を求めて、その人ごとの宅内の運気の善し悪しを判断するという形になります。

 命卦の算出方法については、男性と女性で計算方法が異なりますが、ここでは下の記事に一覧表を置いておきましたのでそちらから自分の本命卦を確認して頂けたらと思います。(なお、命卦の算出法は「玄空飛星派風水のあらましについて」の記事で示したものと同じですよ)

 命卦は次のとおりの8種類で、この命卦に応じた宅盤を使用するという流れです。

求めた本命卦命卦
坎1坎(かん、東四命グループ)
坤2坤(こん、西四命グループ)
震3震(しん、東四命グループ)
巽4巽(そん、東四命グループ)
乾6乾(けん、西四命グループ)
兌7兌(だ、西四命グループ)
艮8艮(ごん、西四命グループ)
離9離(り、東四命グループ)
命卦に5はありません。

 つまりこの命卦による分類とはその個人に属するものなので、何度引っ越ししてもどんな家に住もうともその方にとっての住宅内の吉方位は変化しないということです。

八宅の分類基準②宅卦

 次に宅卦による分類についてです。

 最もメジャーな宅卦の判断基準としては、建物が顔を向けた方向(=向(こう))の反対側である建物の背中側(=坐(ざ))を基準に宅盤を決定するものです。

 例えば下図のような住宅があったとします。

※図面上の地図記号は磁北を指すものとします。

 図に示した宅は南を向いたものであるため、この住宅は南の反対方位、北=坎を坐に持つ「坎宅」となります。そのためこの住宅は「坎宅」の宅盤を使用して宅内の気を判断するということですよ。

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 そしてここまでに書いた命卦の宅盤と宅卦による宅盤のふたつを重ね合わせて、その住人の個々人ごとに住宅内部の気の流れの善し悪しを判断するものが八宅派風水による観法です。

※ちなみにここで書いた住宅の坐を基準にして宅卦を選定する観法は八宅派の中で最もメジャーなものですが、この判断基準の他にも住宅の向側を基準とするものや、玄関の方位を基準として宅盤を分類する流派、技法も存在しますよ。

宅卦と命卦を重ね合わせた判断例

 先の坎宅の例から三人世帯を想定してかんたんに架空の判断例を記します。

 まず、この住宅に住んでいる三人家族が1990年5月生まれの父、1990年8月生まれの母、2012年12月生まれの息子だったとした場合、それぞれの命卦は次のとおりとなります。

父・・・計算結果1のため命卦は坎。

母・・・計算結果5、女性のため5は8となり命卦は艮。

息子・・・計算結果6のため乾です。それぞれの命卦による八游星を間取りに転記します。

 次にこの住宅の宅卦は坎宅ですので、坎宅の八游星を重ね合わせると次のとおりです。

 これで命卦と宅卦が完成しましたので、夫→坎命の坎宅、妻→艮命の坎宅、息子→乾命の坎宅をそれぞれに重ね合わせたものを判断するという事になります。

 なお、命卦と宅卦において相違がみられる場合には命卦の影響が強いために優先すべきは命卦であること、家族内で命卦の東西グループが異なり吉凶方位が混在する場合には、原則として「一家の長」の命を優先して住宅を考えるべきだとされています

 つまりこのケースにおいては家長を父だとした場合には坎命の父が坎宅に入っており、玄関、寝室ともに生気の好ましい方位が取れている状況(ただし寝室としては天医の方が好ましいですが)、しかし書斎は五鬼が巡るため書斎の長期使用やリビング等は凶方位が巡っているという状況で、次に妻と息子に関してはそれぞれの命卦から寝室などの滞在時間が長い部屋の吉凶を判断するという感じです。

 ・・・が、こう考えるとわたしは疑問がわいてきます。

疑問1≫八宅派で夫婦、家族間の命卦が違う場合の扱い

 先に示したとおり、この技法における判断の中で家族間の命卦が相違した場合、優先すべきは一家の長とされている旨を書きました。

 家長というものはもともと日本においても戸籍制度の中で「戸主」という制度があったように「一家の長は父親である」という共通認識があったように思います。

 ですが現代の日本社会でこの認識がどこまで共通のものと言えるかは個人的にはとても疑問を感じます。

 例えば一家の中で大黒柱の役割を果たす者、という認識で考えた場合に①一家の関係性の中で精神的な支柱を務める者、②一家の中で社会的な役割が最も高い者、③一家の内で最も収入が高い者、④家族全員の中での最高齢者、などいくつもの考え方があろうかと思います。

 また、家族形態も多様化している中で、⑤単身赴任、収監、あるいは長期入院等で家長が長期不在になった場合の扱い、⑥兄弟姉妹あるいはシェアハウスなどの同居関係、⑦離婚、死別などの家長の代替わりの検討方法といったケースにおいてどう判断をすべきなのか、少なくともわたしはその答えを持っていません。

 仮に家長が特定できたケースにおいて家長の命にとって玄関が吉方位にあった場合であっても、様々な理由で家長が変われば当然吉凶の方位は変わりますが、たとえば家長であった父が家を出た場合に母が家長の役目を継ぐのか息子が継ぐのか。息子が何歳かに到達していれば息子が継ぐのか?

 仮に「家長の運気の善し悪しは家族全員の運気の善し悪しに直結するものだ」という仮定を建てたとしても、例えば子供という存在は将来のその子が建てる家の家長候補なわけですので、その子に対する命卦の方位によりその子自身が受ける影響が無いわけはない気がします。

 例えば30歳で独身実家暮らしのAには命卦による方位の影響はなく、28歳で所帯持ちのBにのみ命卦の影響は大きいと考えるのは明らかに論理が破綻しているようにわたしは感じてしまいますので・・・。

 そう考えていくと、「命卦による方位の吉凶はすべての個人に影響を与えるものであるが、全員の命卦の吉凶を取ることは不可能なのでやむなく家長の命卦を優先」している、というのがこの論理の示すところの実態に近いのではないかとわたしは考えています。

 ですがそう考えてしまうと、家族全員に好ましい玄関は存在しないのか?夫婦ともに好ましい方位となる寝室は作ることができないのか?という疑問は解消することはありません。

 先の例のように夫にとっては最高の気を運んでくれる幸運の玄関が妻からすれば不幸を招く最悪の玄関で、息子からすれば消耗を暗示する玄関になる、ひとつの寝室が夫にとっては大吉生気の寝室だけど妻にとっては不幸ごとを呼び込む大凶絶命の寝室だというようなケースが往々にして存在しうるということになります。

 さらに言うなら夫婦間で寝室の吉凶が異なる確率は単純計算で2分の1、3人世帯の家族で玄関方位の吉凶が異なる確率は4分の3です。

 うーーん。実際に自分の身の回りを見渡したときに果たしてそれが実態にそぐうものなのかどうか・・・わたしは疑問に感じてしまう。

 個人によって多少の変化があるのは風水に限らずすべての物事で通用するお話ではあるのでわかるのですが、ここまでの理論における命卦の概念はあまりにも影響力が大きすぎる気がします。

 命卦というものが優先だとするならばあまりにもひとつの家の中での吉凶方位が混在しすぎて「良い家」というものが(この八宅派風水ひとつの理論の中だけで)あまりにあいまいになってしまうのではないかと。

 少なくともこの理論の中ではわたしは命卦の異なる夫婦に対してどのような家が良いのかを伝えるときにどう伝えるべきかの答えは持っていません。「配偶者の方には悪いことばかりなので隠しておいてくださいね」とも言えませんし・・・。

疑問2≫八宅派風水の吉凶と時間の概念

 そしてもう一点、この八宅派風水は風水を語る中の大きな流派では「三合派」と呼ばれる流派に属する技法ですが、三合派においては時間の流れという概念が基本ルールの中では存在せず、たとえば命卦、宅卦ともに坎宅における南東方位は新築すぐでも築後50年を経ても最大吉の生気として判断します。

 ですが現実の社会を考えたときにずっと運気の好ましい住宅というものがあるのでしょうか?

 誰しもが自分の身の回りの知人や街中の事業主、あるいはテレビ画面の芸能人や有名社長を見ればわかるとおり、商売運であれ人間関係運であれ、運気の善し悪しには時間経過に伴う興亡が存在しそうなものです。

 20年、30年という長いスパンで考えたら大金持ちが同じ住宅に住んでいながら没落していた、地域の有名企業がいつの間にか破綻していたなんてのはどこにでもある話ですしテレビで見る芸能人や大企業だって同じこと。

 いくら風水の影響力がすべてを決めるわけでないと言ったところで、一軒の建物がずっと同じ運気の流れを保つというのは少なくともわたしには考えづらい、というのがわたしがこの技法に関して抱く大きな疑問です。

八宅派風水における別技法のはなし

 ・・・と、ここまで八宅派風水についてわたしがもともと持っていた疑問点を挙げてみましたが、じつはここまで書いた理論はあくまでも最も広範に普及していると思われる八宅派風水の古典書「八宅明鏡」における技法についてのもので、この観法が八宅派風水のすべてというわけではありません。

 はじめに書いたようにこの八宅派風水は唐の時代から文献が残る歴史ある風水技法のひとつであって、こんな疑問ばかりが簡単に湧いてしまう理論のみでこの技法が名を残しているわけではありません。

 たとえば少しだけ宅卦に関する項目で書いたように宅卦の判断基準は建物の坐を基準にするという一つだけではないうえに、流派によっては命卦を検討せずに宅卦のみを独自の基準で用いるものが存在します。

 宅卦による判断のみを行うということは少なくとも命卦に対する疑問は生じようがないわけで、実際に使ってみるとそれらの観法のほうが現実に符合している気もします。

 またもう一つ書いた時間経過の観点においても、八宅派の中にも毎年の年ごとの気の流れ、つまり「流年」の影響を加味する理論が存在します。

 ただしわたし自身が知る中ではその影響は単年ごとの影響の変化をとらえるもので、たとえば家運、あるいは企業運というものを考えたときには長い時間経過の中での興亡をイメージするほうがしやすいのではないかとは思います。

 この辺りは単にわたしの知識不足の可能性は大いにありますが・・・とはいえ広く知れ渡っている、ここに記した理論の範囲ではそうした疑問の氷解する答えは無いように考えているというのが私の持っている考えです。

おわりに/八宅派風水と玄空飛星派風水

 この記事ではある程度八宅派風水の理論の概要を示しましたが、最後にあげたような理由からわたし自身は実際の鑑定の際や自分自身の住居を選ぶさいにこの八宅派の理論は使用しておりません。

 また、「風水とビジネス」の記事などに挙げたトランプ元大統領、スピルバーグ監督、あるいは鴻海(ホンハイ)、サムスン、あるいはスターバックスの例のように風水技法が西欧諸国を含めて広まっているのは疑いのない事実ですが、わたしが記事作成時に調べた例の中で確認できた風水コンサルタントの方々は玄空飛星派風水をメインで使用している方ばかりでした。

 とはいえ八宅派風水を意味する「eight mansions feng shui」と玄空飛星派風水を意味する「flying star feng shui」でそれぞれグーグル検索をかけてみると検索結果数は八宅派の200万件弱に対して玄空飛星派が4億件程度と、少なくとも英語圏の諸外国に浸透している中国風水理論が玄空飛星派であることは明らかです。

 「玄空飛星派風水のあらましについて」の記事に理論概要を記した玄空飛星派風水とこの記事に挙げた八宅派風水の二つのロジックを見比べて頂くとわかると思いますが、二つの技法の内でシンプルでわかりやすいものは圧倒的にこの八宅派風水です。

 その中で、仮にこの八宅派風水が玄空飛星派風水と同等の効果あるいは実感をもたらすものだとしたら、なぜ誰にでもわかりやすい八宅派風水が世間に浸透しないのかは甚だ疑問が残ります。

 シンプルで善いものがあるならばそのほうが浸透するのは当然の話ですし、またアメリカを始め欧米諸国でこの八宅派と玄空飛星を併用する流派の方は少なからず存在していますのでシンプルで善いものがあるならばわざわざ複雑でわかりづらい理論が選ばれる必要はありません。

 ではここからもう一つ考えを進めて、この二つともの理論を使って一軒の住宅を見ることは可能なのでしょうか?

 結論としてはこの記事に挙げた八宅明鏡方式の観法においては八宅派風水と玄空飛星派風水は住宅内部という同じ範囲の気の流れを測ろうとするロジックが明らかに衝突する技法であるため、これら二つの技法を同等に使用しての鑑定では結論を出すのが難しいとわたしは考えています。

 これら二つの技法を併用すれば当然鑑定結果は衝突し、玄空飛星派風水においては吉方位であるものが八宅派風水では凶となることが往々にしてあり、家族の風水の善し悪しを考えた場合には一軒の住宅内のほとんどの方位が吉凶入交りになってしまいます。

 仮に土地選びの段階から新築住宅の設計をするにしても命卦を勘案して玄空飛星派風水と八宅派風水の双方において家族全員にとっての最高の住宅を作るなんてことは限りなく不可能に近い所業です。そもそも新婚夫婦ならばこれから生まれる子供の命卦を予測することはほぼ不可能ですし。(仮に出生年を選べても男女差がありますので)

 とはいえ、わたし自身は八宅派の命卦による方位吉凶は無視して玄空飛星派風水の山星や向星の好ましい方位を使用していますし、住宅などの風水を鑑定する際にも八宅派風水単独の鑑定は行っておりません。

 ですが前節に挙げた八宅派風水内の命卦を使わない観法であれば一部のレベルまでは玄空飛星派風水と論理を衝突させることなくふたつの技法の併用が可能なものがあり、わたし自身も一部のケースではそうした形で八宅派風水を玄空飛星派風水と併用することはあります。(あくまで一部の例に限りますのですべてのケースではありません。)

 なお、先にも書いたように世界的大企業のコンサルタントを行う鑑定士の方々にも八宅派の著作を持つ方もおり、八宅派をケースによって使用される方もみえると考えています。

 ですので八宅派風水のすべてが使用に適さない技法だというわけではなくて、使い方によるものだろうというのがわたし自身の考えているところです。

 もっと言えば住宅内部の理気の流れを測るための技法は八宅派と玄空飛星派だけではなくて玄空大卦や玄空六法、三元通天照水経など他にもさまざまな技法がある中で、「物件の状況に応じて様々な技法の選択を検討するべきだろう」というのがわたしの持っている結論です。

 すべてを書かずに恐縮ですがこの八宅明鏡方式の八宅派派風水が日本で最も有名な中国風水理論であることはたしかだと思っていますので自分のメモ書きとご参考までにこの記事をしたためてみました。

 そしてこれらのことを考えた上でわたしがメインで使用している宅内の理気をみるためにメインで使用している技法は(沈氏玄空学派の)玄空飛星派風水というお話です。

 それではこの記事はここまでです。ここまで読んでいただきありがとうございました。

 なお、わたしがメインで使用している玄空飛星派風水の理論概要や、風水で気の流れとともに重視する周辺環境のこと、風水を利用する著名人や企業、また風水そのものに対するわたしの基本的な考えについてなどは以下の記事をご覧いただけたらうれしく思います。

 またこの記事では触れませんでしたが、八宅派においても玄空飛星派においても中国風水では鬼門というものは考慮しません。鬼門についてはひとつの記事にガッツリとわたしの考えをまとめておきました。

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