これまでも記事の中で幾度か「フライングスター風水(玄空飛星派風水)」の名前を出してきました。
わたし自身が鑑定に使用しているメインの技法はこの玄空飛星派風水なのですが、ここでは少し玄空飛星派をめぐる風水業界の中の位置づけについて書かせていただこうと思います。
この玄空飛星派風水はレイモンド・ロー老師が「風水大全」で語っていただいているところによると「少なくとも唐代から存在しているたがその実践については清代まで秘密にされてきた」技法であるとのことです。
もともとは王家などの特権階級のためだけに存在した風水技法です。唐代から清代、じつに1,000年を超える年月もの長期間において秘匿とされてきたものがこの玄空飛星派の風水理論だというわけです。
この記事はあくまで玄空飛星派風水(フライングスター風水)理論の外枠に関するものですので、理論の概要を知りたい方は「フライングスター風水のあらまし」の記事を、鑑定がどのようなものが先に知りたい方は鑑定例の記事をご覧くださいね。
フライングスター風水は目に見えない宅内の気の流れを量るための技法
「風水について」の記事で少し触れましたが、風水はその建物について「巒頭(らんとう」(目に見える建物周囲の環境や建物内部の環境を指します。山や川、道路、建物周囲の他の建築物など)と目に見えない気の流れである「理気(りき)」の双方を重視します。
建物周辺の環境を観ない風水も、気の流れを一切観ない風水もまた片手落ちの風水でしかないというわけです。建物周辺の環境の観法については「風水が教える選んではいけない物件10選(周辺環境編)」や「四神相応と建物周辺環境の超基本について」などでふれたようなものが基本となります。
そしてこの玄空飛星派の風水は「建物内部を流れる気の流れ」をおし量ることに特化した技法です。その家の玄関、リビングや寝室といった各エリアにどのような気が流れているのかということです。
宅内に流れる理気を量るための他の風水技法には日本における家相学(気学)もその一つに挙げることができます。鬼門の方角に玄関などが来てはいけないというのはこの家相学の話になります。
そして日本ではその家相学が一般には「風水」として認知されているかと思います。
この家相学については、飛鳥~奈良時代に中国における古い技法である八宅風水と呼ばれるものが仏教とともに伝播したものをベースにして日本で独自に発展したものと考えられています。
八宅風水と家相学のこと
さて、ここから少し八宅風水と家相学について書いていきます。
八宅風水とは、「八宅」の名前の通り、建物の運気の流れや建物に居住する住人の性質を八種類に分けて鑑定を行うものです。家相学についてもこの八宅風水をベースにしたもので類似する点が多くあります。
八宅風水、家相学ともに(玄空飛星派もそうなのですが)細かい流派の違いは多数あるのですがここではさわりの話だけを記します。
八宅風水においては、住宅の玄関から割り出した宅卦、あるいは個人の生まれ年から割り出した本命卦と言われるものから各住宅の吉凶方位を割り出し、実際の家屋の玄関や寝室といった部屋の方位がその個人の持つ8種類の吉凶方位(生気、天医、延年、伏位、絶命、五鬼、六殺、禍害)にどう適合しているかを判断するもので、日本で目にするものとしては住人ごとの本命卦を基準としたものが多いように見受けます。
私自身こうした風水のような事柄に興味を持ってからはじめに勉強を始めたのは八宅風水(と家相学)なのですが、これらを勉強して実際の家庭に当てはめてみようと検討を重ねても納得できる結果は得られなかったところなのですが・・・
①本命卦をベースに宅を考えた場合、玄関や寝室といった方位が家族全員にとって好ましい配置であることが極めて困難になるのではないか。
②家の主人に合わせて宅を設計したとして、実際に事業を起こして順風満帆に事業が数十年単位で続く人の数がどれだけいるのか。
③流派により玄関や本命卦といった観法の違いが顕著過ぎて何を信用すればよいのかわからない
①については八宅風水が本命卦ごとに全く異なる吉凶を持つことから、家族内の成員全員に好ましい玄関や寝室といった各部屋の配置を行うことは極めて困難です。
ですが、実際に身の回りの家族たちを見渡した場合には家族で仲良く順風満帆に暮らす人たちはもちろんたくさんいるわけです。
②についても、商売を興した人が同じ事業を継続できる確率そのものも低いわけですし、数十年単位の長い目で見ればとてつもない大企業が倒産の憂き目に遭っていることは例を挙げるまでもないと思います。
たとえ社長個人の運気の善し悪しがあるにしろ、時間の流れがなく永遠に風水のよい物件なんていうものがあるのだろうかと。
③についてはそのままです。流派による鑑定結果があまりにも異なるために基準をどう取るかによって同じ八宅派であっても結果が正反対になってしまう。
これらの問題は八宅を使用する際には大きな障壁となるもののようにわたしは感じます・・・。
ですので、八宅を使用する際には少なくともこれらの流派があることを知ったうえでいずれの観法を基にするのかきちんと見極める必要があるのだとわたしは考えています。
ただしこの八宅派の理論の中には流派によっては玄空飛星派の理論と矛盾しない形で取り入れることができるものもあり、ケースによってはそうした形で私も使用するところです。
フライングスター風水(玄空飛星派)の特徴
では玄空飛星派が他の風水と何が違うのかという話ですが、玄空飛星派は他の風水と比べて異なる大きな特徴が二つあります。
①時間の流れが理論の中に組み込まれていること。
②建物の向きの種類が24方位+特殊区分×9期間分と多岐にわたること。
①については、実際にあなたの周囲の人々を考えていただくとわかりやすいのですが、たとえば商売を興して良い家を建てた後、同じ家に住み続けて生涯にわたって事業をうまく成功させた人はどれくらいいるでしょうか?
あるいは同じ家に住み続ける中で晩年に入ってのち事業が成功する人だって身近な例を思い浮かべることができるのではないでしょうか。
人の運気は時間の流れとともに変化するものであり、建物の運気もその例外ではないと考えるのが玄空飛星派の考えです。
②については、ひとつの時代区分ごとに24種類の家の異なる家の向きがあり、それが9期間分として216種類です。
また、ひとつの時代区分においても24方位の他に24方位の境界付近に位置するケースにおける特別な区分が存在するため実際にはそれ以上の向きがあることになります。
この期間の区分は20年を区分として合計9区分の180年間ではじめに戻り一周するものです。そのため、今の時代区分から40ー50年間程度の時代区分を考えればほとんどの建物の確認は可能なのですが、それだけを考えても膨大な数になることはわかっていただけるのではないかと。
また、各方位の吉凶区分においても八宅風水が8種類の判断基準であったものに対して、玄空飛星派においては9×9の81の組み合わせにより方位の吉凶判定を行います。
わたし自身の経験を言うなら、不幸が続いてしまった家や企業においてはそうした結果が、うまくことが進んでいる家族や企業においてはそうした結果が、玄空飛星派の風水で判断を行ったときに理論と結果が自分の中で納得のいく形で消化できました。
また、もう少し個人的な経験を話すならば、八宅風水や家相学を専門に扱ってきた鑑定家の方が玄空飛星派の道を歩むようになった例は幾人も実例を知っていますが、逆に玄空飛星を扱ってきた方が八宅風水や家相学の道に歩むようになった方は少なくとも私は知りません。
フライングスター風水(玄空飛星派)における時間の流れ「三元九運」
先ほど書いた9期間についてですが、この時間の流れのことを三元九運と呼びます。
玄空飛星派は大きく見れば「三元派」という中国風水の学閥に属するのですが、その三元派において採用されている時間軸が「三元九運」といわれるものです。
三元九運においては一回りの周期が180年間とされており、その180年間を九つの期間に分けます。ですので九分割された一つの期間は20年間です。なお、180年間が終わった後には再度第一運に戻る循環構造になっています。
元運 | 期間 |
第一運 | 1864年2月頭~1884年2月頭 |
第二運 | 1884年2月頭~1904年2月頭 |
第三運 | 1904年2月頭~1924年2月頭 |
第四運 | 1924年2月頭~1944年2月頭 |
第五運 | 1944年2月頭~1964年2月4日 |
第六運 | 1964年2月5日~1984年2月4日 |
第七運 | 1984年2月5日~2004年2月3日 |
第八運 | 2004年2月4日~2024年2月3日 |
第九運 | 2024年2月4日~2044年2月頭 |
上の表のとおり2023年4月の記事執筆時点では期間の区分は第八運にあたります。その第八運は2024年2月3日までで2024年2月4日から第九運の期間が始まるというわけです。
この期間区分は世界中で同一ですので、2023年現在は運気の切り替えがなされる過渡期の時代です。第九運に入ればこれまで悪いとされてきたものが良い効果を持ちだし、これまで良かったものが悪くなってしまうことが起こるわけですので、企業の興亡や社会の変化が促される時期になるのかもしれません。
そして玄空飛星派の解釈における建物の運気の善し悪しも変わってくるため、これから玄空飛星派を利用して物件探しをする方、家を建てようと考えている方は第九運に適応した建物を選んだほうが良いということですよ。
また、ここで書いたように、建築物は20年ごとの期間区分(元運)の影響を最も強く受けるものですが、そのほかに毎年巡る年月の影響もまた受けるものであるとされています。
玄空飛星派風水の流派について
さて、この玄空飛星派風水ですが、じつはこの玄空飛星派風水の中にも複数の流派が存在しています。
風水の流派、観法には多くのものが存在しており技法に応じて観る範囲、あるいは見る対象が異なるために複数の技法を並行して使用することが多いものです。
玄空飛星派風水においてたとえば有名な流派を挙げるならば沈竹礽(しんちくじょう)の理論をベースとする「沈氏玄空学」、そして孔昭蘇の孔氏玄空宝鑑をベースとした「孔氏玄空学」、談養吾氏の理論をベースとした「談氏玄空学(≒無常派)」などがありますが、このサイトで紹介している理論については原則として沈氏玄空学の理論によるものです。
わたしの理解している範囲では、「フライングスター風水(flying star fengshui)」と呼ばれる技法は沈氏玄空学がベースになったものが多いのだと考えており、世界的に有名になっている技法がこの沈氏玄空学だと考えています。
孔氏玄空学や談氏玄空学についてこのサイトで理論などを紹介することはありませんが、これらの理論においてはすべてが同じ内容を見てロジックが単純にぶつかるというものでもなく、物件によっては複数の技法を併用してみることが有効なものもありますよ。
世界での玄空飛星派風水の広がり
玄空飛星派が世界でいま一番信頼を得ている風水技法であることを先に書きました。
文化大革命により中国本土の風水などの文化が弾圧され、当時の風水師たちは難を逃れるため台湾や香港などに移住したとされています。その後華僑の広がりも相まって、台湾、香港、シンガポールなどにこの玄空飛星派は浸透しました。
そしてその後はアメリカやヨーロッパなどにおいてもこの玄空飛星派が最もポピュラーな風水技法として受け入れられてきているという背景があります。
たとえば玄空飛星派風水を世界に広めた立役者の一人であるレイモンド・ロー老師の著作はポーランド語、フランス語、ロシア語、ギリシャ語、ハンガリー語、タイ語、日本語など 10を超える言語に翻訳されており、世界中の弟子の数は2000人以上とも言われています。1996年には世界経済フォーラムにおいて講演を行ったことでも有名です。
参考HP:feng shui by JEN「Grand Master Raymond Lo」
なお、玄空飛星派風水は英語圏では「Flying star fengshui」と呼ばれており、日本でもフライングスター風水が玄空飛星派風水の別名ですよ。
また、こうした技法におけるコンサルタントを導入している著名人や企業はスピルバーグ監督、ドナルドトランプ氏、ボディショップ、アリババグループ、TSMC、マリーナベイサンズなどと数多く存在します。
それらについてネット上である程度信頼がおけそうだと私が判断したものについては「風水とビジネス」の記事で紹介していますのでよかったらそれらも見て頂けたら。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
この記事においてはフライングスター風水における基礎的な知識についてお示ししました。具体的な理論がどのようなものかについては「フライングスター風水のあらましについて」や「フライングスター風水のレメディ(化殺)とは」の記事をご覧ください。
また実際の鑑定例については現在3つの例をお示ししています、風水に関する理論の根底にある五行思想については「陰陽五行思想」の記事を、わたし自身の風水に関する思想の根本については「風水について」の記事をご覧いただけたらうれしく思います。
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